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 麻原彰晃第16回公判(1996年11月21日)での豊田亨の証言

 検察「3月20日に地下鉄サリン事件があったのを知っているか」
 豊田「はい」
 検察「関与したか」
 豊田「はい」
 検察「散布したものが何かわかっていたか」
 豊田「はい」
 検察「何と思ったか」
 豊田「サリンと考えた」
 検察「何をしたか」
 豊田「日比谷線にサリンを散布する実行役」
 検察「サリン散布のきっかけは」
 豊田「村井の指示」
 検察「村井秀夫のことか」
 豊田「はい」
 検察「村井の立場は」
 豊田「科学技術省大臣」
 検察「指示は何回あったか」
 豊田「2回」
 検察「1回目はいつか」
 豊田「平成7年3月17日夜から18日朝の間のどっか」
 検察「根拠は」
 豊田「平成7年3月18日、小銃部品の隠匿をしたが、その前という記憶がある」
 検察「隠匿の時間は」
 豊田「夜明けから日没まで」
 検察「1回目の指示の場所は」
 豊田「第6サティアン3階の一角」
 検察「それは部屋か通路か」
 豊田「通路」
 検察「誰がいたか」
 豊田「次官だった林泰男、廣瀬、横山の何名か。誰かはわからない」
 検察「林郁夫は」
 豊田「いなかった」
 検察「内容は」
 豊田「近々ワークをしてもらう。追って連絡する」
 検察「他に言われたことは」
 豊田「関係するのは自分、泰男、廣瀬、横山、郁夫の5名」
 検察「ワークの中身は」
 豊田「話さなかった」
 検察「わからなかったか」
 豊田「わからなかった」
 検察「他には」
 豊田「記憶していない」
 検察「その後」
 豊田「2回目の指示があった」
 検察「いつ」
 豊田「平成7年3月18日夜と思う」
 検察「根拠は」
 豊田「隠匿から帰った後だった」
 検察「場所は」
 豊田「第6サティアン3階の村井の自室」
 検察「経過は」
 豊田「自分から行ったのか、呼ばれた記憶はない」
 検察「誰かいたか」
 豊田「いなかった」
 検察「村井が言ったことは」
 豊田「ワークは地下鉄にサリンを撒くこと。井上と前のメンバーで行動するよう
に」
 検察「村井からサリン〜ないか」
 豊田「はい」
 検察「誰か」
 豊田「自分では、泰男、郁夫、自分、廣瀬、横山と考えていた」
 検察「井上の立場は」
 豊田「村井からの詳細な指示を伝える役」
 検察「どこの地下鉄と思ったか」
 豊田「東京」
 検察「サリンがどんなものか知っていたか」
 豊田「はい」
 検察「認識は」
 豊田「強力な毒物」
 検察「意味は」
 豊田「殺傷し得るもの」
 検察「どうして知っていたのか」
 豊田「平成6年3月ころ、松本被告が説法で毒ガス攻撃を受けていると言ってい
たので、それに関連して知っていた」
 検察「サリンの用意については」
 豊田「言わなかった」
 検察「関係は」
 豊田「作ろうとしていたのは知っていた」
 検察「いつ知ったのか」
 豊田「平成6年10月ころ」
 検察「どのようなことから」
 豊田「サリンプラントである第7サティアンの作業に関与したから」
 検察「サリンを撒くことは村井の独断だと思ったか」
 豊田「思わなかった」
 検察「どう思ったか」
 豊田「松本被告の指示と思った」
 検察「なぜ」
 豊田「当時の自分の発想としては、村井の指示だったから」
 検察「根拠は」
 豊田「村井は常々、グルからの指示をそのとおり実行しなければいけないと言っ
ていたし、そのような姿勢を公の説法で賞賛されていたから」
 検察「どのように答えたか」
 豊田「記憶に無いが承諾した」
 検察「どのような結果になると思ったか」
 豊田「多数の被害者が出ることが頭をよぎった」
 検察「なぜ承諾したのか」
 豊田「何か深遠な意味があり、それが救済になると考えたから」
 検察「村井から目的について話があったか」
 豊田「なかった」
 検察「目的を考えたか」
 豊田「考えなかった」
 検察「方法や量の話は」
 豊田「ない」
 検察「その後」
 豊田「廣瀬の部屋に行った」
 検察「部屋はどこか」
 豊田「第6サティアン3階」
 検察「廣瀬はいたか」
 豊田「はい」
 検察「他には」
 豊田「いなかった」
 検察「どうしたか」
 豊田「ワークとは何か質問した」
 検察「廣瀬は何と言ったか」
 豊田「地下鉄にサリンを撒くと返事をした」
 検察「その後」
 豊田「横山の部屋に行ったことがあった」
 検察「経過は」
 豊田「行ったことは間違いないが、経過ははっきりしない」
 検察「まっすぐに行ったのか
 豊田「はっきりしない」
 検察「誰がいたか」
 豊田「横山、廣瀬と記憶している」
 検察「他には」
 豊田「すでにいたのか後から来たのか、泰男が顔を見せた」
 検察「廣瀬と横山は何をしていたか」
 豊田「容器に液体を入れ、こぼすことを検討していた」
 検察「容器は」
 豊田「ジュースの容器」
 検察「本件での動きがあったのは」
 豊田「翌日3月19日午前9時から10時の間と思う」
 検察「どのような」
 豊田「泰男が呼びに来て出発した」
 検察「東京へ向かったのか」
 豊田「はい」
 検察「いつ」
 豊田「3月19日午前9時から10時の間と思う」
 検察「誰と」
 豊田「何人かと一緒」
 検察「他には」
 豊田「泰男、廣瀬、横山、平田、杉本らと行った。寺嶋もいたかもしれない」
 検察「杉本とは、杉本繁郎か」
 豊田「はい」
 検察「平田は、平田信か」
 豊田「はい」
 検察「寺嶋は、寺嶋敬司か」
 豊田「はい」
 検察「交通手段は」
 豊田「2台の自動車に分乗して」
 検察「一緒に乗ったのは」
 豊田「泰男と平田と同じ車に乗った。それ以外ははっきりしない」
 検察「運転していたのは」
 豊田「泰男と後部座席に座ったので彼ではないがせ、はっきりしない」
 検察「どこへ行ったか」
 豊田「杉並の一軒家」
 検察「来たことはあったか」
 豊田「ない」
 検察「何時ころ着いたか」
 豊田「正午ころ」
 検察「杉並とわかったのは」
 豊田「道路標識を見たか、誰かの話に上った」
 検察「どの」
 豊田「わからない」
 検察「どのような建物だったか」
 豊田「木造の平屋」
 検察「部屋の数は」
 豊田「2部屋以上あつた」
 検察「何かわかったか」
 豊田「はい」
 検察「何か」
 豊田「諜報省の活動拠点」
 検察「なぜわかったか」
 豊田「誰かの話で」
 検察「2台とも着いたか」
 豊田「はい」
 検察「全員着いたということか」
 豊田「はい」
 検察「他に人はいたか」
 豊田「はっきりしないが、いないと思う」
 検察「どの部屋に入ったか」
 豊田「台所の向かい側の部屋」
 検察「広さは」
 豊田「6畳くらい」
 検察「特徴は」
 豊田「掘り炬燵があった」
 検察「何をしたか」
 豊田「相談したように思う」
 検察「内容は」
 豊田「覚えていない。実行行為をするときのために、変装用の服を購入する必要
がある」
 検察「撒く具体的な話は」
 豊田「記憶にない。廣瀬と横山が下見に行ったことを考えると、あったと思う」
 検察「どうしたか」
 豊田「食事、買い物に出かけた」
 検察「何を買ったか」
 豊田「変装用の洋服など」
 検察「どこへ行ったか」
 豊田「新宿」
 検察「メンバーは」
 豊田「他に、泰男、廣瀬、横山、平田、杉本。寺嶋もいたと思う」
 検察「まず何をしたか」
 豊田「食事をした」
 検察「どのような店に入ったか」
 豊田「東南アジアかどこかの民族料理店」
 検察「その後」
 豊田「買い物をした」
 検察「メンバーは」
 豊田「他に、泰男、廣瀬、横山、平田が付きあっていた」
 検察「他のメンバーは」
 豊田「車に帰って待機していた」
 検察「買ったものは」
 豊田「洋服、鞄、眼鏡、靴、かつらなど」
 検察「その後」
 豊田「杉本と一軒家に帰った」
 検察「他のメンバーは」
 豊田「自分、泰男、平田が1つの車に乗り、もう一つの車には残りが乗って別行
動した。もう一人ははっきりしない」
 検察「横山らは何のために別行動をとったか」
 豊田「下見のため」
 検察「証人、泰男らはまっすぐに帰ったのか」
 豊田「百貨店の食料品売場に立ち寄った」
 検察「この段階ではまだ容器に入れてこぼす話があったので、容器を買うため」
 検察「どうしたか」
 豊田「杉本らと帰った」
 検察「何時ころ」
 豊田「午後6時ころ」
 検察「何をしたか」
 豊田「休んでいたと思う」
 検察「横山ら、他のメンバーは戻って来たか」
 豊田「はい」
 検察「誰かやって来た人はいたか」
 豊田「はい」
 検察「誰がいつ来たか」
 豊田「午後6時から8時の間に、井上嘉浩と、おそらく高橋克也も来たと思う」
 検察「他に誰かいたか」
 豊田「それ以外にもいたと思うが、面識がないので名前はわからない」
 検察「何人くらい」
 豊田「2、3人」
 検察「どのようなことをしたか」
 豊田「実行行為について話し合った」
 検察「内容は」
 豊田「各人の路線、乗車駅、降車駅、霞ヶ関を通ること、実行役には運転役がつ
く、自分は先頭車両に乗ること、時刻は8時、というようなこと」
 検察「8時の根拠は」
 豊田「通勤時間帯であること」
 検察「路線は」
 豊田「日比谷線の両方向、丸ノ内線の両方向、千代田線の片方向、計5路線」
 検察「霞ヶ関を通るというのは、霞ヶ関を狙うということか」
 豊田「はい」
 検察「運転役は」
 豊田「実行役を乗車駅まで送り、降車駅で拾う」
 検察「担当の話はあつたか」
 豊田「はい」
 検察「路線は、証人の場合」
 豊田「日比谷線、中目黒から恵比寿方向」
 検察「車両は一番前ということだったか」
 豊田「そう」
 検察「降車駅は」
 豊田「自分の場合は恵比寿駅」
 検察「乗車駅は」
 豊田「恵比寿から2つ3つ先ということだった」
 検察「具体的には」
 豊田「話には出なかった」
 検察「運転役は」
 豊田「その段階でははっきりしない」
 検察「証人以外の担当は」
 豊田「泰男が日比谷線のもう一方向、郁夫が千代田線という話はあったと思う。
それ以外は記憶していない」
 検察「廣瀬、横山の路線はわからないということか」
 豊田「はい」
 検察「証人以外の車両の話は」
 豊田「出たかも知れないが記憶にない」
 検察「降車、乗車駅については」
 豊田「話はあったが記憶にない」
 検察「運転役は」
 豊田「記憶にない」
 検察「霞ヶ関を狙う理由は話に出たか」
 豊田「警視庁を狙うという話があったと思う」
 検察「理由は」
 豊田「警察に何らかの打撃を与えるということだったが、細かい部分はわからな
い」
 検察「理由はわかったか」
 豊田「わからない」
 検察「話はどのような形で進んだか」
 豊田「主に井上が発言し、周りが注目しているという形だった」
 検察「その後、どうしたか」
 豊田「場所を移動した」
 検察「どこに移動したか」
 豊田「渋谷のマンション」
 検察「なぜか」
 豊田「井上の指示」
 検察「理由はわかったか」
 豊田「わからない」
 検察「何時ころ向かったか」
 豊田「午後8時ころ」
 検察「メンバーは」
 豊田「自分以外に、泰男、廣瀬、横山らがいたと思う」
 検察「どのようにして行ったか」
 豊田「自動車で」
 検察「誰と」
 豊田「全員の記憶はないが、運転手は高橋克也だった」
 検察「他には」
 豊田「記憶がはっきりしない」
 検察「井上は一緒に行ったか」
 豊田「はっきりしない」
 検察「行かなかったのは」
 豊田「後の状況から考えて、平田、寺嶋は行っていないことになる」
 検察「着いたのは」
 豊田「午後8時半から9時の間」
 検察「マンションの一室だったか」
 豊田「はい」
 検察「何階だったか」
 豊田「4階か5階くらい」
 検察「以前に来たことはあったか」
 豊田「ない」
 検察「持っていったものは」
 豊田「購入した洋服などを紙袋に入れて持っていった」
 検察「自分の手で」
 豊田「自分の手で持って入った記憶がある」
 検察「その前後、関係者と会ったか」
 豊田「はい」
 検察「誰と会ったか」
 豊田「新実、外崎、北村」
 検察「どこで」
 豊田「マンションの前の坂道の上の方の路上で」
 検察「その後」
 豊田「一緒に一室に入った」
 検察「メンバーは」
 豊田「他に、泰男、郁夫、廣瀬、横山、新実、杉本、外崎、北村、高橋、井上の
計11名」
 検察「理由はわかったか」
 豊田「全員、サリン散布の計画に関与すると考えた」
 検察「運転役はわかったか」
 豊田「11名のうち、新実、杉本、北村、外崎、高橋と考えた」
 検察「井上はいつ来たか」
 豊田「はっきりしないが、着いてしばらくしてから」
 検察「郁夫はいつ来たか」
 豊田「それよりだいぶ遅れて来た」
 検察「何時ころかわかるか」
 豊田「はっきりしないが午後10時ころと思う」
 検察「どのようにして来たか」
 豊田「渋谷まで自分で運転してきて、電話を入れて、誰かが迎えに行った」
 検察「なぜか」
 豊田「そのマンションには来たことがないからだと思う」
 検察「11名がそろったのは何時ころか」
 豊田「郁夫が最後だったので、午後10時ころ」
 検察「撒く話は出たか」
 豊田「はい」
 検察「どのような形で進んだか」
 豊田「全員が井上に注目するという形」
 検察「皆が注目して井上が発言するという形か」
 豊田「主にそういう形態だった」
 検察「話は」
 豊田「運転役を決定した」
 検察「証人に対しては」
 豊田「運転役は高橋克也になった」
 検察「面識はあったか」
 豊田「顔と名前は知っていた」
 検察「証人以外の組み合わせは」
 豊田「泰男は杉本、郁夫は新実と思う」
 検察「横山と廣瀬はわからないか」
 豊田「はい」
 検察「確認は」
 豊田「あったかもしれないが記憶にない」
 検察「地図などで路線を確認したことは」
 豊田「記憶がはっきりしない」
 検察「その後」
 豊田「各々で下見に行った」
 検察「他に話は」
 豊田「特に無い」
 検察「下見には行ったか」
 豊田「はい」
 検察「誰と」
 豊田「高橋と一緒に」
 検察「他のメンバーは下見に行ったか」
 豊田「行ったと思う」
 検察「時間は」
 豊田「はっきりしないが、10時以降11時くらいの間」
 検察「交通手段は」
 豊田「高橋の運転する車」
 検察「どこに向かったか」
 豊田「まず降車駅である恵比寿駅に行った」
 検察「どうしてか」
 豊田「待ち合わせ場所を決める必要があったから」
 検察「決めたか」
 豊田「はい」
 検察「実際に決まったか」
 豊田「はい」
 検察「どこになったか」
 豊田「ロータリーの一角」
 検察「理由は」
 豊田「逃げやすいから」
 検察「その後」
 豊田「乗車駅に向かった」
 検察「どの駅か」
 豊田「名前は記憶にないが、恵比寿から2つ3つ先の駅」
 検察「下見をしたか」
 豊田「はい」
 検察「その駅に決めたか」
 豊田「決めなかった」
 検察「理由は」
 豊田「本数が、午前8時ころは少なかったから」
 検察「どの駅に決めたか」
 豊田「中目黒駅」
 検察「中目黒に向かったか」
 豊田「はい」
 検察「その後」
 豊田「わたしが時刻表を確認し、8時ころ霞ヶ関へ向かう列車があることがわか
り、実際に乗ってみることにした。高橋には、打ち合わせをした場所で待機してお
くように指示をした」
 検察「実際に乗ったのか」
 豊田「はい」
 検察「どれくらいの時間がかかったか」
 豊田「2、3分」
 検察「他にわかったことは」
 豊田「中目黒のホームは地上で恵比寿は地下にあり、途中で地下に入ることがわ
かった」
 検察「何を考えたか」
 豊田「地下に入ったら散布の準備が必要だと思った」
 検察「着いてから」
 豊田「列車を降りて打ち合わせの場所に向かった」
 検察「どうしたか」
 豊田「車に乗り、帰った」
 検察「どうしたか」
 豊田「休んだと思う」
 検察「他の人は戻って来たか」
 豊田「戻って来たと思う」
 検察「サリンの用意は」
 豊田「はっきりしないが、村井が持って来るという話があったような気がする」
 検察「実際には」
 豊田「我々が上九一色村に取りに帰った」
 検察「なぜわかったか」
 豊田「村井からだと思うが、泰男の携帯に連絡が入った」
 検察「受け取りに行くことになったのか」
 豊田「はい」
 検察「交通手段は」
 豊田「自動車」
 検察「何台で」
 豊田「2台で」
 検察「メンバーは」
 豊田「他に、泰男、郁夫、廣瀬、横山が分乗し、運転手もいたと思う」
 検察「運転手は」
 豊田「自分の車は外崎で、もう1台ははっきりしない」
 検察「杉本ではないか」
 豊田「はっきりしない」
 検察「誰と一緒だったか」
 豊田「廣瀬と外崎の運転する車に乗った」
 検察「何時ころ着いたか」
 豊田「3月20日午前2時か3時ころ」
 検察「どうしたか」
 豊田「第7サティアンに行った」
 検察「どのようなところへ行ったのか」
 豊田「1階中央の廊下を仕切ったような小部屋」
 検察「メンバーは」
 豊田「他に、泰男、郁夫、廣瀬、横山」
 検察「運転手は行っていないのか」
 豊田「行っていない」
 検察「第7サティアンには誰かいたか」
 豊田「すでにいたのか後から加わったのかはっきりしないが、村井が加わった」
 検察「村井が言ったことは」
 豊田「サリンを撒の方法を説明した」
 検察「方法とは」
 豊田「ビニール袋を鋭利な傘でつっ突き発散させる」
 検察「他に説明は」
 豊田「2重袋になっていること」
 検察「どうしろということか」
 豊田「使う前に外袋を取り去るよう指示された」
 検察「他に言ったことは」
 豊田「指紋を残さないように手袋をするように言われた」
 検察「サリンの数は」
 豊田「11袋」
 豊田「何袋担当したか」
 豊田「2袋」
 検察「他のメンバーは」
 豊田「泰男が3袋で、それ以外は2袋ずつ」
 検察「傘で刺すということだったか」
 豊田「新聞でくるんで刺すように言われた」
 検察「包むことに決まったのか」
 豊田「はい」
 検察「誰の指示か」
 豊田「村井」
 検察「その後」
 豊田「傘の先端は水で洗い流した方がいいということだった」
 検察「村井から言われたことは」
 豊田「サリンは水で分解される」
 検察「他には」
 豊田「大阪支部に強制捜査が入った。これは宗教弾圧である」
 検察「証人が思ったことは
 豊田「そのとおりであると考えた」
 検察「それを聞いてサリンについて考えたことは」
 豊田「宗教弾圧への対抗策ではないか」
 検察「サリンはあったか」
 豊田「はい」
 検察「どこにあったか」
 豊田「部屋の隅にあった段ボールに入れてあった」
 検察「見たか」
 豊田「はい」
 検察「形状は」
 豊田「いびつな長方形」
 検察「違う点は」
 豊田「なかった」
 検察「2重袋だったか」
 豊田「はい」
 検察「大きさは」
 豊田「だいたい外袋が、縦25センチ、横20センチくらい」
 検察「11個とも同じだったか」
 豊田「はい」
 検察「どのようなものだったか」
 豊田「2重袋で、内袋に液状の透明な黄色、あるいは茶色のものが入っていた」
 検察「量は同じだったか」
 豊田「同じくらいだと思う」
 検察「11730号証、写真10を示します。比較すると」
 豊田「ほぼ同じ」
 検察「これは外袋のないものだが、内袋は同じか」
 豊田「はい」
 検察「色は」
 豊田「このような色だった」
 検察「傘は用意されていたか」
 豊田「はい」
 検察「何本あったか」
 豊田「5本以上」
 検察「どのような傘だったか」
 豊田「傘自体はコンビニエンスストアで売っているような安価なもので、先端が
斜めに切ってあった」
 検察「加工してあったのか」
 豊田「はい」
 検察「他には」
 豊田「水の入ったビニール袋で実行の練習をした」
 検察「指示したのは」
 豊田「村井」
 検察「練習用のものはあったのか」
 豊田「あったのか持って来たのかははっきりしない」
 検察「練習したか」
 豊田「はい」
 検察「他の人は」
 豊田「練習したように思う」
 検察「何袋したか」
 豊田「1個か2個」
 検察「それ以外に誰か来たか」
 豊田「どっかから遠藤がいた」
 検察「いつからか」
 豊田「はっきりしない」
 検察「遠藤のほかには」
 豊田「はっきりしない」
 検察「井上は」
 豊田「はっきりしない」
 検察「遠藤は」
 豊田「錠剤をくれ、わたしの鞄にサリンを詰めてくれた」
 検察「錠剤の説明は」
 豊田「実行の2時間前に飲むように指示した」
 検察「他の者も受け取ったのか」
 豊田「そう思う」
 検察「錠剤はどんなものと思ったか」
 豊田「サリンの解毒薬だと思った」
 検察「鞄というのは」
 豊田「新宿で購入した鞄」
 検察「証人はどうしたか」
 豊田「鞄の口を広げて持っていた」
 検察「何袋あったか」
 豊田「11袋」
 検察「鞄は誰が持ったか」
 豊田「自分」
 検察「重さは」
 豊田「はっきりしない」
 検察「その後」
 豊田「渋谷に戻った」
 検察「第7サティアンにいた時間は」
 豊田「1時間弱」
 検察「車で戻ったのか」
 豊田「はい」
 検察「誰と」
 豊田「廣瀬と外崎の運転する車に乗った」
 検察「傘は」
 豊田「各自で持ったか、誰かがまとめて持ったかはっきりしない」
 検察「鞄は」
 豊田「膝の上に置いていた」
 検察「気持ちは」
 豊田「記憶していない」
 検察「まっすぐに戻ったか」
 豊田「途中、コンビニエンスストアに立ち寄った」
 検察「場所は」
 豊田「はっきりしないが、高速に乗る前の山梨側」
 検察「理由は」
 豊田「村井に指示された手袋を購入するため」
 検察「実際に買ったか」
 豊田「はい」
 検察「何個」
 豊田「複数」
 検察「色、種類、材質は」
 豊田「白の薄手の綿のもので、タクシーの運転手がするようなもの。それ以外に
軍手も買った」
 検察「戻ったのは何時ころか」
 豊田「午前4時か5時ころ」
 検察「鞄は持っていったか」
 豊田「はい」
 検察「何をしたか」
 豊田「自分は休んだ」
 検察「ビニール袋は」
 豊田「自分が部屋まで持っていき、各実行役に持っていくように指示した」
 検察「証人が担当する分は」
 豊田「皆が取り去って、2個が残った」
 検察「準備は」
 豊田「服を着替えるなどした」
 検察「身に着けたものは」
 豊田「前日に購入したブレザー上下、コート、かつら、眼鏡」
 検察「用意は」
 豊田「サリンの入った鞄、傘、ハサミ、ガムテープ、〜、手袋など」
 検察「誰かから何かを受け取ったか」
 豊田「郁夫から注射器を受け取った」
 検察「何のためかわかったか」
 豊田「サリンを吸ったときの解毒剤」
 検察「郁夫の説明は」
 豊田「気分が悪くなったら、大腿部にうつように言われた」
 検察「本数は」
 豊田「1本」
 検察「他の者も受け取ったか」
 豊田「はい」
 検察「第7サティアンで遠藤にもらった錠剤は飲んだか」
 豊田「はい」
 検察「その後」
 豊田「6時15分にマンションを出た」
 検察「誰と」
 豊田「運転役の高橋と」
 検察「どうしたか」
 豊田「車に乗り、中目黒に向かった」
 検察「それ以外のメンバーは」
 豊田「すでに出発していた」
 検察「最後に出たのか」
 豊田「はい」
 検察「なぜ最後だったのか」
 豊田「渋谷からだと中目黒が一番近かったから」
 検察「まっすぐに行ったか」
 豊田「コンビニエンスストアに立ち寄った」
 検察「なぜ」
 豊田「新聞を購入するため」
 検察「買ったか」
 豊田「はい」
 検察「その後」
 豊田「高橋に指示して、人の少ないところに行ってもらった」
 検察「どうしたか」
 豊田「人通りの少ない住宅街で車を止めた」
 検察「何をしたか」
 豊田「新聞でくるむなど準備をした」
 検察「車の中でか」
 豊田「はい」
 検察「具体的には」
 豊田「手袋をして2重袋の外を取り、内袋を2つ重ね新聞紙1、2枚でくるみ、
ガムテープで1、2か所固定した」
 検察「手袋はその後」
 豊田「していた」
 検察「サリンは」
 豊田「再び鞄に入れた」
 検察「その後」
 豊田「高橋に指示して、中目黒に向かった」
 検察「どのあたりで降りたか」
 豊田「駅の近く」
 検察「手に持っていたものは」
 豊田「鞄と傘」
 検察「話をしたか」
 豊田「高橋が『気をつけて』と言ったのでうなずいた」
 検察「時間は」
 豊田「7時ころだった」
 検察「根拠は」
 豊田「駅の時計を見てわかった」
 検察「どのあたりにあったか」
 豊田「改札を入らなくても外から見える位置にあった」
 検察「思ったことは」
 豊田「8時には早すぎるので、時間を調整する必要がある」
 検察「何をしたか」
 豊田「少し歩いた」
 検察「駅には入ったか」
 豊田「はい」
 検察「何時ころ」
 豊田「7時30分くらい」
 検察「ホームは何個あったか」
 豊田「2本」
 検察「どちらに行ったか」
 豊田「恵比寿を向いて左側」
 検察「どちらか」
 豊田「中目黒から恵比寿方向」
 検察「ホームのどのあたりに行ったか」
 豊田「前の方」
 検察「どうしたか」
 豊田「しばらくやり過ごした」
 検察「何をしていたか」
 豊田「マスクを着けて新聞を読んでいた」
 検察「位置を決めたか」
 豊田「はい」
 検察「どこか」
 豊田「先頭車両の一番後ろ」
 検察「理由は」
 豊田「先頭車両というのは指示で、一番後ろというのは恵比寿で下車しやすいか
ら」
 検察「下車は」
 豊田「出口に近いところにした」
 検察「どうしたか」
 豊田「7時50分ころになって列に並んだ」
 検察「なぜ」
 豊田「実行を座ってやろうと考えたから」
 検察「どのあたりに」
 豊田「3列の左端。最終的に先頭になった」
 検察「列の左側か」
 豊田「はい」
 検察「実際に乗ったか」
 豊田「はい」
 検察「座ることはできたか」
 豊田「はい」
 検察「どのあたりか」
 豊田「先頭車両の後ろの扉のすぐ左」

図面に書き込む
 
 検察「なぜか」
 豊田「扉に近く、降りやすいから」
 検察「発車したか」
 豊田「はい」
 検察「何時だったか」
 豊田「8時直前」
 検察「混雑していたか」
 豊田「立っている人はいたが、超満員というほどではなかった」
 検察「考えたことは」
 豊田「指示のとおり実行することで頭がいっぱいだった」
 検察「やりたくないと思ったか」
 豊田「そういう気持ちが起きる余裕はなかった」
 検察「鞄は」
 豊田「最初は膝の上に置いていた」
 検察「準備は」
 豊田「地下に入ったとき鞄を足元に置いた。袋を取り出し、足の間の座席寄りに
置いた」
 検察「その後」
 豊田「列車が止まる寸前に穴を開け、下車した」
 検察「刺したのか」
 豊田「はい」
 検察「何回」
 豊田「はっきり記憶していないが2、3回」
 検察「格好は」
 豊田「座った状態で傘を両手で持ち、床に垂直に突き下ろした」
 検察「感触は」
 豊田「ドンという感じで、袋を突き破り床に当たった感触があった」
 検察「気持ちは」
 豊田「何も考える余裕はなかった」
 検察「図面に袋の位置を書いてください」

図面に書く

 検察「刺してから」
 豊田「恵比寿に着いたので下車した」
 検察「その後」
 豊田「改札を出て、待ち合わせ場所に向かった」
 検察「着いてから」
 豊田「後部座席に座り、傘をビニールでくるむなどした」
 検察「渋谷にはまっすぐ帰ったか」
 豊田「回り道をした」
 検察「理由は」
 豊田「万が一つけられていると問題がある、と高橋が判断したため」
 検察「マンションに着いたか」
 豊田「はい」
 検察「何時ころ」
 豊田「8時30分ころと思う」
 検察「他のメンバーは」
 豊田「戻っていなかった」
 検察「最初だったのか」
 豊田「はい」
 検察「誰かいたか」
 豊田「記憶がはっきりしない」
 検察「井上は」
 豊田「はっきりしない」
 検察「持ち込んだものは」
 豊田「鞄とビニールで包んだ傘」
 検察「他のメンバーも戻って来たか」
 豊田「はい」
 検察「どんな様子だったか」
 豊田「記憶していない」
 検察「具合が悪くなったものはいたか」
 豊田「はい」
 検察「何をしていたか」
 豊田「郁夫に注射をうってもらっていた」
 検察「覚えているのは」
 豊田「廣瀬が具合が悪くなったと思う」
 検察「証人自身は」
 豊田「少し気分が悪いように感じた」
 検察「原因は」
 豊田「残っていたサリンのせいか、精神的なものかよくわからない」
 検察「どうしたか」
 豊田「郁夫に注射をしてもらった」
 検察「何に効果があるかわかったか」
 豊田「サリンと考えた」
 検察「何をしたか」
 豊田「服などをビニールに詰め、シャワーを浴びた」
 検察「ビニールに詰めたのは」
 豊田「使った後のものは廃棄するという話があった」
 検察「他にできごとは」
 豊田「テレビの臨時ニュースでサリン事件のことが報道されていた」
 検察「覚えていることは」
 豊田「多数の被害者が出、駅に救急車が来ている映像」
 検察「思ったことは」
 豊田「自分がやっておきながら矛盾するが、『やってしまったか』という気持ち
が起こってきた」
 検察「10名はどうしたか」
 豊田「直接山梨に帰る人と、廃棄焼却するグループに分かれた」
 検察「上九へ帰るメンバーは」
 豊田「自分、廣瀬、横山ら」
 検察「他には」
 豊田「外崎、北村が帰った」
 検察「廃棄のメンバーは」
 豊田「井上、泰男、新実、杉本ら」
 検察「郁夫は」
 豊田「どちらでもないと記憶している」
 検察「誰と一緒だったか」
 豊田「横山と外崎の運転する車に乗った」
 検察「何時に出たか」
 豊田「午前11時ころ」
 検察「何時に着いたか」
 豊田「正午か午後1時ころ」
 検察「何をしたか」
 豊田「部屋で休んでいた」
 検察「どこか」
 豊田「第6サティアン3階」
 検察「ずっと」
 豊田「そうではない」
 検察「その後」
 豊田「村井がやって来た」
 検察「言ったことは」
 豊田「尊師のところに報告に行こうと」
 検察「何の報告かわかったか」
 豊田「サリンを撒いてきたことと考えた」
 検察「誰と」
 豊田「廣瀬、横山と行った」
 検察「松本被告のところに行ったのか」
 豊田「はい」
 検察「どこか」
 豊田「1階の自室」
 検察「時間は」
 豊田「まだ陽が出ていた」
 検察「誰がいたか」
 豊田「松本被告」
 検察「他には」
 豊田「いなかった」
 検察「報告は」
 豊田「村井が代表して報告した」
 検察「言ったことは」
 豊田「3人が帰ってきました」
 検察「被告が言ったことは」
 豊田「そうか」
 検察「その後、何か言ったか」
 豊田「はい」
 検察「どのようなことか」
 豊田「3名に、『偉大なるグル、シヴァ大神、すべての真理勝者方にポアされて
よかったね』と1万回唱えるように言われた」
 検察「意味は」
 豊田「我々の行為によって、亡くなられた方や被害を受けた方は救済されている
と解釈した」
 検察「他には」
 豊田「廣瀬に、彼の修行が進んでいると言われた」
 検察「他に」
 豊田「入れ替わりに遠藤が来た」
 検察「マントラは唱えたか」
 豊田「はい」
 検察「気持ちは」
 豊田「救済である」
 検察「逮捕は」
 豊田「平成7年5月15日」
 検察「最初の態度は」
 豊田「黙秘していた」
 検察「なぜ」
 豊田「万が一逮捕されたときには黙秘するよう、村井から指示があった」
 検察「その後」
 豊田「知っていることを話した」
 検察「いつから」
 豊田「4、5日してから」
 検察「理由は」
 豊田「取り調べの検事、警察の方から被害を受けられた方の様子を聞かせていた
だいて、人間として自分のやったことに堪えられなくなって」
 検察「救済」
 豊田「当時の思考はかなり混乱していた」
 検察「心のどこかに…」
 豊田「あれは救済であったけれども自分はしゃべってしまったという気持ちもあ
った」
 豊田「救済と思っていない」
 検察「では現在は」
 豊田「凶悪な犯罪だと思っている」
 検察「いつから」
 豊田「全部申し上げるのは難しいが、きっかけは平成7年10月ころにあった」
 検察「何か」
 豊田「松本被告の第1回公判の引き延ばし」
 検察「どうして知ったか」
 豊田「検事か刑事から聞いた」
 検察「延期についてどう思ったか」
 豊田「かつての説法で、『自分の宗教的確信は不動である。たとえ断頭台に立つ
ことがあっても揺るがない』と言っていた。第1回公判で、事件の背景にある宗教
的確信を得られるのではないかと思ったので、盲目的に救済と思い続けることがで
きなくなった」
 検察「他に」
 豊田「第1回公判や破防法の弁明、最近の言動など」
 検察「どうして知ったか」
 豊田「はじめの2つは弁護人が差し入れしてくれた新聞によって、3つ目は購読
している新聞で知った」
 検察「第1回公判については」
 豊田「事件の背景となった考え方について触れられなかったことを知り、失望、
落胆といった気持ちが強まった。破壊活動の弁明では一転して、自分のことを経典
の翻訳者と表現したり、かつての発言と一貫性のない発言をしている点について矛
盾を感じた」
 検察「最近では」
 豊田「廣瀬被告が証人として出廷したときの言動は、コメントするのも哀しい気
がします」
 検察「哀しい理由は」
 豊田「単に一貫性がないという次元ですまされるべきでなく、かつて宗教的確信
は不動だと言い、最終解脱者と自認していた人間の発言と思うと、今日の態度を見
るにつけ、怒りや憤りを通り越して哀しいとしか言いようがない」
 検察「証人がしたことをどう思っているか」
 豊田「自分のなした行為は、文字どおり取り返しのつかない犯罪であり、人間と
して許されない行為である。盲目的に実行してしまった自分の愚かさは、いくら後
悔してもしきれない」
 検察「被害者の方には」
 豊田「亡くなられた方の遺族の方や被害者の様子を聞かせていただいたが、『こ
んなことをした犯人を殺してやりたい』とという言葉があったが、まったく当然だ
と思う。今の自分には殺されることすらできない。知っている事実を話して、この
ような事件が2度と起こらないようにするのが極めて当然である。あのようなこと
をした人間が生きていること自体が申し訳ない」
 検察「松本被告には」
 豊田「多くの言動を通じ、現在ではもう何を言ってもしようがないという気持ち
です」
 検察「つけ加えは」
 豊田「そういう気持ちもあるが、かつて松本被告が『宗教上の指導者は非常に責
任が重い。万が一誤った方向に導いた場合の悪業は計り知れない」という自らの言
葉を覚えているのであれば、本当のことを話していただきたいと思う」
 





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