以下、対訳および私の注釈で論文の内容を紹介
Esterification par l'alcool isopropylique
イソプロピルアルコールによるエステル化
(三浦注:小見出しである)
Dans un ballone tubule muni d'un thermometre et surmonte d'un refrigerant ascendant en relation avec une collone dessechante a chlorire de calciumon introduit:
温度上昇冷却装置の上に置かれた温度計付き丸底フラスコの中で、塩化カルシウム乾燥管(注1)に以下の物質を反応させる。
(注1)塩化カルシウムは、水分除去つまり乾燥剤として使われる。
130.5g de CH3POCl2 pur (0.98mol/g)
et 102.0g de CH3POF2 pur (1.02mol/g).
純粋CH3POCl2を130.グラム(0.98モル)
純粋CH3POF2を102.0 グラム(1.02モル)。
(三浦注:この論文では溶剤のことには触れていないので、溶剤は使っていないようだ)
On refroidit le ballone dans l'eau glacee et on ajoute goute,en agitant,125 g d'alcool isopropylique pur et sec (2.08mol/g) en reglant le debit pour que la temperature de la masse reactionnelle se maintienne entre 6 et 8 .
氷の中でこのフラスコを冷却し、12グラムの純粋乾燥イソプロピルアルコール(2.08モル)を一滴ずつ、かき混ぜながら加えていく。その時、反応物の温度が6度から8度に保たれるように、加える量は一定にする。
(三浦注:反応式ではイソプロピルアルコールは2モルなので、
CH3POCl2の0.98モルに対しては1.96モル、
CH3POF2の1.02モルに対しては2.04モル、となるはずだが、
論文では2.08モルとなっている)
L'addition dure 1 h 1/2;lorsqu'elle est achevee on poursuit la refrigeration encore 15 mn puis on abandonne 30 mn a la temperature ambiante.
滴下は1時間半つづく。終了後15分間冷却し、その後、空気中で30分間そのままにしておく。
Enfine pour terminer la reaction on chauffe progressivement au bain-marie en adaptant une rentree,d'air sec et en creant, dans l'appareil,une depression de 600 mm d'eau.
最後に反応を終了させるため、水浴温度を徐々に上げていき、乾燥空気によって還流(注2)をおこさせ、器具の中を水圧600ミリメートルに減圧するように調節する。
(注2)還流とは、蒸留のときの加熱によって生じた蒸気を凝縮させて、もとの液状にする、ことをいう。
On porte ainsi le melange a 40-50°pendant 1/2 h.
このようにして40〜50度の反応を30分続ける。
Il faut ensuit proceder au deganze rapide du produit qui contient de l'acide chlorhydrique en dissolution.
反応(溶解)の過程で、生成物は塩酸を含んでしまうので、それをすぐに除去しなければならない。
Pour cela apres avoir regle la temperature de la masse a 30°,on fait le vide.
そのためには、物質温度が30度であることを確認した後、真空をつくる。
On abaisse progressivement la pression de facon a l'amener au voisinage de 50 mm de mercure.
圧力を徐々に下げていき、水銀柱50ミリメートル近くにもっていく。
(三浦注:1気圧は水銀柱760ミリメートルなので、かなり減圧することになる)
On maintient un tel vide durant 3/4 d'heure et finalement 15 mn pendant 1/4 d'heure.
45分間その真空を維持し、最終的には15分で水銀柱15ミリメートルとなる。
(三浦注:原文では15mnとなっているが、水銀柱15mmと解釈した)
Il reste,apres ce traitment,277 g d'un liquide mobile legerement blond.
この反応後、白っぽい流動液が 277グラム得られる。
(三浦注:blondはブロンドの髪というように、ふつうは金色と解釈されているが、淡色や淡い黄色という意味もあるという)
La rectification de ce produit brut donne:
この粗生成物の蒸留により次のものが得られる。
1°6 g de tetes d'environ 25 a 41°sous 17 mm;
1、約25〜41度、水銀柱17ミリメートルで、初留部分(注3)が6グラム
(三浦注:これが何かは、はっきりしない)
(注3)初留とは、蒸留のさい分留塔の一番上に集まる成分。沸点が低いものが一番上に集まる。
2°207 g de coeurs de 46 a 55°sous 16 mm avec parier a 51-52°(soit un rendement de 73.9% de la theorie en
sarin distille);
46〜55度、水銀柱16ミリメートルで、中心部分207グラム。温度の水平部分は51〜52度(サリン蒸留理論によれば、73.9%の収率).
(三浦注:これがサリンである。前にさっぱりわからない、と書いたJCSの論文の49.5°/11mmは、49.5度、水銀柱11ミリメートルと見当をつけることができた。ただJCSではあとに続く数字85%を収率と解釈したが、この論文では収率は73.9%となっている。かなり数字に違いがある)
3°49 g d'un residu huileux blond clair.
3、明白色の油性残留物が49グラム。
(三浦注:これが何かは、はっきりしない)
【引用】
・Monard,Quinchon論文「フランス化学社会報告書」1961年1084-1086頁
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今回紹介した、第五工程の概要を、私なりにまとめておく。
CH3P(O)Cl2+CH3P(O)F2+2(CH3)2CHOH
→2CH3P(O)FOCH(CH3)2+2HCl
メチルホスホン酸ジクロリド130.5g(0.98モル)と
メチルホスホンジフルオリド102.0g(1.02モル)に
イソプロピルアルコール125g(2.08モル)を一滴ずつ加えて、反応させる。
蒸留するとサリン207gを得ることができる。
収率は73.9%。
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