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「オウム裁判対策協議会」についての声明


 昨年3月20日の「地下鉄サリン事件」以来の さまざまな動きは、この国の社会のあり方にとって非常に大き な問題を内包しつつ進行しています。

 ”社会防衛””危機管理”の名を借りて、一連の事件を契機 に公権力によって強行された違法捜査・別件逮捕・子供の拉致 などは、目に余るものがあります。また、完全に警察の広報に 成り下がったマスメディアの報道ぶり――”オウム叩き”も異 常です。テレビに出演している一部識者の、オウムだけは特別 で、今回は微罪・別件逮捕などの捜査手法を認めるべきだとす るコメントも酷すぎます。

 オウム関連の裁判に弁護人がつきにくいという事実も、近代 的な法治国の出来事とは思えないくらい異常です。公判の傍聴 券抽選に数千人の行列ができるが、そのほとんどがテレビ局な どマスメディアが雇ったアルバイトであり、一般の傍聴は非常 に困難であることは裁判の公開原則に反しています。私たちは、 この国が冤罪を多発させてきたことをよく知っているだけに、 ”自供”と状況証拠だけによる裁判を認めるわけにはいきませ ん。教団を脱会すれば刑が軽くなり脱会しなければ刑が重いと いう判決の実体をみると、まさに”魔女狩り裁判”であると考 えざるを得ません。「公平な裁判を受ける権利」は、もはや空 文となりつつあります。憲法の理念・刑事訴訟法の適正手続き など、民主主義の根幹に関わる重大問題が、この国では十分な 論議を尽くすこともないうちに、無視されようとしています。
 私たちは、一連の「事件」の真実――裏の裏についても知る 権利を主張します。警察・検察庁・裁判所による情報の秘匿を 許すことはできません。現在進行しつつある刑事訴訟実務にお ける、さまざまな異常事態(証拠の非開示・弁護活動への制限 など)についても、オウムだけの特別措置と解釈することを拒 否します。 オウム関連「事件」の一つ一つについて、その社 会的な意味・動機・事実・態様を含む全てが、明らかにされる 必要があります。

 どのような凶悪犯人にも人権が保障されるべきだ、というの が原点です。

 あくまでも宗教団体であるオウム真理教団に対して、強引に 破壊活動防止法を適用しようとする動きについても、断固反対 の意志表示をします。

 以上のような観点から、私たち市民の有志は、昨年夏以来協 議を重ねて「オウム裁判対策協議会」を発足させました。関連 事件の被疑者・被告人とされた人々については、オウム真理教 を信ずる者も信じない者も、無実か有実かに関わらず救援し、 なによりも被告人のための弁護・真に公正な裁判を求めて活動 します。

 1996年1月

オウム裁判対策協議会

世話人  山 際  永 三
千代丸  健 二
山 中  幸 男




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