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問題提起



司会: それではシンポジウム「オウム問題における人権」を始めたいと思います。

 今年三月のサリン事件からずっとオウム真理教をめぐる問題というのは、各報道機関等を通じて、まさに日本中を席巻していて、それが8か月たった今でもほとんど変わっていないということは、普段ニュースやワイドショウで皆さんが見て、感じてい ることだと思います。


シンポ開催の趣旨

 今日のシンポジウムも、そのオウムショックといえる現象に対する一つの反応というところでは、そういった大きな流れの中の一つと受けとられるかと思います。ただ今日は、タイトルからおわかりのように、報道されているような一連の事件に関して、オウム真理教がどれほど関わっていたのかを詮索する場所でもないし、あるいは日本の若きエリートといわれるような人たちが何でオウム真理教に入信したのかということを心理的に解説する場所でもないし、また、オウム真理教内部の人間関係というものをあれやこれやと想像するような場所でもありません。

 今日はむしろ疑惑から逮捕、裁判に至る過程の中で、一度はそれなりに取り上げられながら、今では忘れ去られているような、或いは今現在、時々刻々と進行しながら、ほとんど焦点化されていないような問題について焦点を当てて、いわゆるオウム問題というものを捉え返したいというのが、今日のシンポジウムの趣旨です。

 それを私たちの言葉で言えば「人権という立場から」ということになるかと思います。それはもちろん私達一般市民の人権ということでもありますが同時に、被疑者や被告人の人権でもあり、それから子ども達の人権であり、そして、信仰を持つ人々の人権ということでもあるわけです。

 例えば、捜査段階でいろいろ行われた微罪・別件逮捕、或いはいま裁判段階で行われているいろんな例外的措置というようなものが、ほんとうに今回に限ってということなら許されることなのか。それから、松本サリン事件では大きな報道被害の問題が起こりまして 、それに対するマスコミ各社の反省が行われた。しかしそのことが今回の事件に関して本当に生かされているのか。或いは、サリン事件以降、異常なほどの過剰警備がなされましたが、そういったことによって得られる私たちの安心というものがいったいどういった性質のものなのか、というようなことを、今日はオウム問題として考えたいと思っています。

 今日のシンポジウムは、いわゆるオウムショックといわれるような一連の現象の中の一つでありながら、そういった経過の中でこぼれおちてしまっているような視点から、もう一回オウム問題を捉え返して、そのあらたな意味づけを探りたいと、そういうふうに位置づけられるかと思っています。私たち実行委員会としては、そういう形でオウム問題を捉え返すことで、今日のシンポジウム全体が今の日本の社会風潮に対するひとつの問題提起になれば、と考えています。

 それでは、さまざまな問題提起をしていただくパネリストの方々を紹介したいとおもいます。

 発言の順に一番奥にいらっしゃるのが千代丸健二さん。(拍手)

 千代丸さんはオウムの施設から強制連行されました信徒の子ども達の母親の相談にのるという形でこの問題に関わっていらっしゃいます。今日は、信徒の裁判における人権問題ということを中心にお話ししていただく予定です。

 その手前にいらっしゃいますのが、福田雅章さんです。(拍手)

 福田さんは一橋大学で教鞭を執りながら、子どもの権利条約のための国連NGO日本支部の代表をされていらっしゃいます。今日は、子どもの権利という立場からお話をいただきます。

 それから、その手前にいらっしゃるのが、宅八郎さんです。(拍手)

 宅さんは『SPA!』という雑誌に連載をしていらっしゃいまして(途中で宅氏、連載は「終わりました」と訂正)、オウム問題に関して積極的に発言を続けていらっしゃいます。

今日は、ご自身がかつて報道被害に遭われたという経験をもふまえて、報道の在りかたを中心に提起していただきたいと思います。

 それから、一番手前にいらっしゃるのが、浅野健一さんです。(拍手)

 浅野さんは同志社大学の先生でもありますが、同時に人権と報道・連絡会の世話人でもありまして、メディアの抱える構造的、基本的な問題ということについて指摘していただく予定です。

 それから今日はもうおひとり、『あごら』の編集者の斎藤千代さんをパネリストに予定していたのですが、急病で欠席せざるを得ないということで、ご連絡がありましたのでご了承をいただきたいと思います。

 お手元に資料があるかと思います。これについては、各パネリストの方々が問題提起の中でふれらることがあるかと思いますが、基本的には、パネリストの方々の問題提起の終わった後に、簡単な資料解説を予定していますので、その時にご覧いただければよいかと思います。

 それから、場内を主催者側とマスコミの方とが撮影することがあるかと思います。ただ、参加しておられる皆さんのほうに向けては撮らないということで合意ができておりますので、その点ご了承いただきたいと思います。それでは、パネリストの問題提起に移りたいと思います。

 では、千代丸さんお願いいたします。



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