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鈴木邦男
(一水会代表)


江川さんが来る?

どうも。えーっと、今日ここに来まして、ここ(黒板)に江川さんが出ると書いてある。で、
「江川さんが来るはず無いのに、よく来たなー」
って木附さんに言ったら、木附さんが
「隣に居るじゃないか」
って。
びっくりしました。最初にこの集会の御案内を貰った時も、オウムの人も来るし、江川さんも来るし、と。
新左翼の人も来るし、右翼も来るし。
それで破防法反対の集会をすると。そんなの出来るのか、と思ったんです。
特に、江川さんとオウム信者が同席するというのができるのかと思ったんですね。
それで、
「鈴木さんは、江川さんが来るのは嫌だとか、誰が来るのは嫌だとか、そういうのはありますか?」
と。
私は
「別にいいですよ」
と。節操が無いですからね。そういう話をしたんです。
で、ただね、こういう運動もそうなんでしょうけどね、何か一つの問題に反対するとなると、反対なんだけど、でも彼らとはここが違うとか、いろいろあるんですねえ。


犯罪を生む公安のやり方

2、3ヵ月前にテレビで、破防法についての、ワイドショーでの企画があったので、
「鈴木さん、出ませんか」
と。
「ああ、いいですよ」
と。
その時は、顔のいかつい、公安調査庁を辞めた人がいますね?いかにも公安という顔をした人。誰だったかな、名前忘れたけど、鬼瓦みたいな顔した人が。
その人と、それから共産党の人と僕が三人出る、と。
で、まあ共産党は、もともと破防法否定だったですね。共産党を潰すために作られたようなもんですからね、破防法は。
では、一水会は、準指定団体だろうということで、同じ様な立場だから破防法に反対している。で、話をしてもらいたい、と。
で、僕もその、公安というのはね、警察の公安3課の人達に、非常に目を付けられて、尾行されたり逮捕されたり、ガサ入れ、家宅捜索というんですけども、されたりすることがあるんですけど、いわゆる上の人達が何を考えているのか、そういうのが全然分からないんですね。
話す機会が無いんですよ。僕は、公安とかのああいうやりかたは、かえって犯罪者を生み出す制度だと思うし、何もしない人達を、かえって犯罪に押しやってると思ってますがね。
もう、必要悪だと思ってますからねえ。そういう人達と話し合いたいんですけど、全然そういう場が無いんですよ。
だからまあ、折角の機会だから、公安庁を辞めた人と話し合いたいと思ったんですね。
というのは、今はこういう集会をやっても、合法的にやってますね。
ちゃんと会館も借りて。デモなんかでも、ちゃんと警察に願い出て、道路使用許可を貰って、
「こういうコースをデモする」
と。
で、ちょっとでも外れたらすぐに逮捕するぞ、という。全て合法的にやってますね。
合法的にやりながら警察はもうバシャバシャ写真を撮ってね、新しい奴が来たら、徹底的に、家まで尾行して。それで勤めてる会社まで尾行して、それで会社の上司の方に
「お前の所に勤めてる奴がこういうことをやってるよ、右翼に入ってるよ」
あるいは「新左翼の集会に出たぞ」とかね。あるいはアパートに行って、
「お宅のアパートの人がこんなことをやってるよ」
とかやる訳ですよね。
そうするとね、合法のはずなのに、それに出た人間は非合法扱いなんですね。


ガサの実態

さらに僕なんかもう、いまだにね、ガサ入れされてるんですよ。
今はもう運動には殆どタッチしてないし、今、予備校と専門学校で教えていますから、自分では教育者だと思っていますけども。
にも拘らず、去年の10月なんかね、週刊SPAにちょっと昔の赤報隊のことを
「こうじゃないかなあ」
なっんて書いたら、それだけでガサ入れして。
それでもう四時間半位、徹底的に捜索されて。金属探知機を持ってきて、ピストルが無いか、とかね、覚醒剤が無いか、とか。関係ないですよね。
それで、SPAに書いたので、
「そこまで書いてるんなら赤報隊のことを知ってるんじゃないか」
と、そういうことにする訳ですよ。
で、大家さんとこへ行けば、大家さんは慌てて出てきますよねえ。
大家さんは
「なんですか」
って。
「いや、殺人と放火容疑で家宅捜索をしている」
と。
そしたら大家さんは、普通は出て行って貰いたいと思いますよね。僕が大家さんだったら、やっぱりそう思いますね。
だって訳分かんない人達が来て、
「放火容疑で家宅捜索している」
って、そりゃ、堪らないです。
木造アパートですからね。間違って火が点けられたら堪らない、と。
「いや、そんなことはやってない」
と言うと、
「そういう容疑があった」
と。
「誰か分からないけども、鈴木が関係している」
あるいは
「鈴木の所をガサ入れしたら、そういう友達とかなんかから関係者が出てくるんじゃないか」
とか、そういう容疑だけでやっているだけで、彼を犯人としてやってる訳じゃないと言うかもしれない。
でも、簡単にガサ入れの令状を出すんです、裁判官は。
逮捕状だとなかなか慎重にやりますが、ガサ入れだったらすぐ出すんです。全部、百ヵ所でも二百ヵ所でも、何回でも出しますよ。
これは、裁判官はガサ入れされたことがないからですよ。経験が無いからですよ。
ガサ入れっていうのは、何もピストルとか麻薬とかが出てこない限り大丈夫だろう、ただ探すだけだ、と。そんなことないんですよ。
名簿を押収したりね、人間関係を徹底的に破壊するんですね。
そうすると、誰だって、僕もそうですがね、いまさらデモに出たり、あるいはいろんな変な集会に出たりして、お巡りさんに目を付けられて、尾行されたりするのは嫌だ、と。
それよりは、秘密に地下に潜って、普通は普段の生活。で、まあ休みの日だけそういう出てきて火炎瓶を投げて帰る、と。
そうした方がいいだろう、と。実際そういう人達がいる訳です。
そういう人達の方が、普段は堂々と生活してるんですよ。そうでしょ。
非合法をしてる人の方が堂々としている。 で、合法的に社会運動をやろうとか、宗教や政治や、そういう問題に興味を持つ人は徹底的に警察に目を付けられて、一生ブラック・リストにも載るんです。
こういう社会はおかしいと思うんですよ。
で、さらに破防法が出てきたら、もっともっとそうなるでしょ。


追いつめられた結果

僕は、オウムの問題は僕自身の問題でもあるな、と思ったのは、今は全て合法的にやるべきだと思っていますからね、僕は。
どんなことがあっても、例えば街頭で演説をしていて、変な人にいっぱい絡まれる。
あるいは左翼の人から因縁つけられる。
昔だったらね、
「この野郎」
って、車を降りて、喧嘩になって。殴り合いなんかをしてね。
今は絶対やっちゃいけない、って。たとえ警察に挑発されても手を出すな、と。
たとえ左翼の人や酔っ払いから挑発されても絶対手を出すな、と。
「じゃあ、殴られたらどうするんですか」
と。
「殴られても手を出すな」
と言ってるんですよ、後輩の人には。
右の頬を打たれたら左の頬を出せ、と。
でないと、右翼っていうレッテルを貼られちゃうとね、たとえ正当防衛であろうと何であろうと、手を出したら、
「そりゃ見たことか、やっぱり右翼だからやるんだ」
と言われちゃうんですよ。だからもう、どんなことがあっても手を出すな、と。
警察からやられたら、やられっぱなしにしろ、と。他の人から殴られたら、殴られっぱなしにしろ、という風に言ってるんです。
そうい形で来た。ですからかなり、必然的に厳しいんですね、運動をやるってことは。
昔は人数も少ないですからね、思い詰めて。
この社会を変えるためには、まず自分達が身体でもってやらなくちゃいけない、と思い詰めてた時があったんですね。
それはね、昔は全共闘運動だとか右翼運動の三島由紀夫がどうだとか、ああいうことには、いっぱい人が集まったんですよ。
で、ちょっとデモをすると、一万人とか何千人とか集るから、それだけで、世の中を変えていくんだ、変わるんだという手応えがあったんですね。
また、マスコミも普通の人達も、学生やそういう運動をしている人達に好意的だったですね。
なかなかいい人達だ、学生なんだからいいことをやってるんだろう、というですね。
それが1970年頃から警察に力ずくで全部潰されちゃって、みんな少数になった。
そうすると、三島由紀夫のように我々が少人数でやろうと思ったら、腹を切って心中でもやるしかない、と。
あるいはハイジャックして北朝鮮に行って、世界革命戦争を目指すしかないな、という風に思い詰めて。
あるいは山の中に篭って、自分達少人数だけで革命をやろう、と。
その中に、もうかなりスパイがいる。で、査問をする、殺す。


一水会スパイ査問事件

同じ様なことがね、僕等にもあったんですね、一水会の中でね。
数が少なくなって、それでも何かやらなくちゃいけない。
火炎瓶投げたり、テロをやろう、あるいは思い詰めた中で、さらに変な奴がいるんですね。
運動って、どうしても変な奴がいっぱい入って来るんですよ。
それは?????、ないと思うんですね。で、そうすると、
「我々の運動が弾圧されている」
と。
そうすると、
「これは絶対に、我々は100%正義の運動をやっているにも拘らず、警察が目を付けている。弾圧されている。人数は少なくなる。運動は伸びない。誰かスパイがいるだろう。スパイがいるからこうなってるんだ」。
まったくオウム真理教と同じ様な状態になってくるんですね。
それでまあ、僕はタッチしてなかったんだけども、そういった中で「こいつはスパイだろう、じゃあどっか隠れ家に連れて行って査問しよう」。
で、
「抵抗するだろうから、バールで一発頭をブン殴れば気を失うだろう」。
そう思ったら、火曜サスペンス劇場の様にはいかないんですね。
一発頭をブン殴ってもね、失神しないんですよ。だって、向かってくるわけですね。
と、思った、と後で聞いたんですよ。三十発、四十発殴ったら死んじゃった。
あ、やばい、って。それで、
「鈴木に報告したら何を言われるか分からない」
と。
「このことを明らかにされたら、我々の運動の全てが否定されちゃう」
と。
オウム真理教と同じですね、状況が。
「そしたら、隠すしかない。じゃあ埋めちゃえ」
と。富士山麓に埋めちゃった。
そしたら今度、埋めた人間の中で、動揺する奴がいる、と。
「そいつはそれを警察に言うかもしれない。そいつはまだ革命思想が足りないから、多分、自供するだろう。じゃあしょうがない、埋め直そう」
と。
埋め直したら、死体が無いはずだから。推理小説を読んで、そう思った訳ですね。
松本清張が多分そんなこと言ってた、と。 松本清張の小説を読んで埋めたらしいんですね。
それで、
「実は埋め直そう、と」。
そして、その時点で僕は相談されたからねえ。
僕もだから、今考えたらね、無理やりにでも、裏切者と言われても警察に110番すれば良かったんですけどね、情が移っちゃいますからね。
本人たちがどうしても逃げたいと。
そんなことで捕まったら、いろいろこれからすることが幾らでもあるのに、こういうことがいろいろあったら堪んないな、と思ったんですけど、その度に捕まってたら駄目だ、と。?????????と。
やっぱりどうしても逃げたい、と。で、死体を下へ移せば大丈夫だ、ばれない。
鈴木さん、死体遺棄を手伝ってよ、と。
しょうがなく、僕も情に負けちゃって、うちの木村って奴に、
「しょうがない、手伝ってやるよ」。
ですから、いろんなやばいことをしてたんですね。それで、
「お前は、じゃあ逃げろ」
と。
麻原彰晃尊師のようにじゃないけども、まあ、いろいろ、こう・・・指令を下した訳ですよ。
で、そいつらは最終的に捕まったんですね。
捕まって、彼らが喋ったら終わりですからね。で、もう一ヶ月位、毎日24時間びっちりお巡りさんが付いてたんです。
で、誰かが自供したら、すぐ捕まえられるようにしていた。
ただし、捕まえられても裁判では、僕は、
「そいつらが嘘だ、僕は何もしていない」
と言うしかないですね。
だって四人捕まるよりは三人捕まったほうがいいだろうと、リアリストですから、そう思って。
まあ、そんなこともあって、それがまた、仲間内というか、後輩が
「鈴木がやれって言ったからやった」
と、
そういう風に言われたとしても、それはしょうが無いなと思う訳ですね。
ただ、それも無いのに自分が捕まることはないだろうと思うんですね。
だから、そういう意味で、少人数で、マスコミも警察も、また一般の人も自分達に偏見を持っている、どんどん追込まれて、自分達は100%正しい運動をしているのに、と。
だから、やらなくちゃいけないというのか、オウム的なのり・・・分かったですね。


SPA!の連載

ですから、そういうのを全て清算した上で今はやってるんですけどねえ。
それで、そういうもの、過去の運動を反省する上で、今、週刊SPAでも昔のことを書いてたんですけどね、こういうことだけでね、ガサ入れに来るんですよ。
で、さらに、別な関係で、色んな人と付き合ってますからね。
「三億円事件は実は俺がやったんだ」
とかね。いろいろいる訳ですね。
「本当かなあ」
って。それとか、
「鈴木さんだけに言いますけども、ゴルゴ13というのは、実は僕なんですよ」
とかね(会場爆笑)。
そういう秘密を打ち明けてくれる人がいっぱいいる訳ですよ(笑)。
だから、面白い話があるんですね。で、書こうかな、と思った。
それでちょっといろいろ話を聞いて、そこまで書いたら絶対警察に逮捕されるな、というのがあって、それでやめた連載もあったんですねえ。
また、ガサ入れされた時に、自分が小説に書こうと思ってね、赤報隊から誰が来て、自分はこういう指令を出した、と。小説の筋書なんかを書いてたんです。
「ああ、やっぱりお前じゃないか」
ってねえ(会場爆笑)。
そういうメモだけで逮捕される場合も、絶対僕だったらあるんじゃないかと思ったですねえ。
そういうことで、非常に危ない話だな、と、破防法というのは。


リアリテイーある反対運動を

で、さらに、僕等が反対するのは当然だろう、と。準指定団体だから。
で、オウムが反対するのも当然だろう、と。
でも、やはり江川紹子さんが、オウムを叩いて批判している人が反対しているんだ、と。
一般の人達も、
「こりゃあ危ないですよ」
ということを、もっともっと国民運動として大きな形にしなくちゃいけないんじゃないかと思うんですね。
その点をちょっと江川さんに聞こうかな、と思ったんですけどね。

最初の話がとぎれちゃったんですけど、共産党の人達と破防法の話をやる予定だったんですけど、そしたら共産党の人は、駄目だ、と言うんです。
我々は破防法反対だけども、右翼が言う破防法反対とは論理が違う、と。
右翼と一緒に出たら、我々が右翼と同じ様な理由で反対してると思われる。だから困る、と。
じゃあ鈴木さんがビデオで出てくれ、と。それも駄目だ、と。
結局、企画そのものが没になったんです。
没になったのかな、公安の人が一人でやったのかな、そこら辺が?????。
そういう意味で、今日なんか、ちょっと画期的な集会ですよね、これだけいろんな人が来て。
ですから、できたら破防法賛成の人も含めて、いろんな人達が出て、それで、破防法というのは問題なんだ、というようにしないと。
破防法賛成の人は
「オウムみたいなのは、やっちゃえ、潰しちゃえ」
と。
破防法反対の方も、連中のアクションに負けまいと思って、それについてマイクを持ってリアクションでね、
「破防法が適用されたら何も出来なくなりますよ。世の中、全て地獄になりますよ」。
あるいは昔だったら「刑職法が通ったら、デートできませんよ」
とか、
あるいは
「安保が通ったら、すぐ戦争になりますよ」
というのを、やっぱり市民運動とか左翼はやってきましたからね。
そういうのって、やっぱりみんなリアリティーが無いんですね。
確かに、オウムはまだまだ危険性はあるし、破防法もやらざるを得ないと思ってる人もいるでしょうからね。
しかしながら、本当に破防法が必要なのかどうか。また、我々の政治運動や、それからいろんな宗教運動などが、どうあるべきか。
そういう人達が思い詰めないような、あるいはもっともっと、みんなが見ている所でやれるような。
公開していく、オープンに運動や宗教運動、そういったものをがやれるような場を作ることが必要なんじゃないかな、と思うんですね。
でないと、喋ったりね、世の中に対しておかしいと思った自分の精神的なものを求めるような、そういう人達の行き場が無いんですよ。と、思います。





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