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大田原市・厚生省・文部省・自治省に対する、
「転入届不受理裁判を支援し、『オウム信者』の生活権を考える連絡会」
の要請活動

大田原市に申し入れ
 3月13日(月)、東京・茨城・栃木から計6人で大田原市に出向いた。残念ながらこの日は市内中学校の卒業式とかで、市長以下、責任者の大半が留守だったため、私たちの対応にあたったのは総務部企画調整室の菊地さん。「受け取るだけ・伝えるだけ」でこちらも了承し、千保一夫市長宛の「オウム信者の転入届に関する要請」(別掲)を手渡した。  同市佐久山に実際に居住している子どもを含む信者住民について、それまで受入れ断固拒否の立場をとっていた市長が、一転して転入届受理を打ち出した。しかし、その条件として出されたのが、「世帯数は14人」「国保保険証は1通」「退去が予定されている7月20日以降は大田原市・大田原市民との一切の関わりを絶つ」「損害賠償請求の訴訟を起こさない」「弁護士会への人権救済申し立てを取り下げる」など11項目に渡る極めて異例・異様な「誓約書提出要望」(3月9日付「下野新聞」)だ。しかも「要望」の理由や内容について一般市職員はほとんど知らされていないらしい。
 おそろしく下品なこの「要望」はまた、下野新聞(だけ)に垂れ流された。
 転入届不受理という、そもそも違法な措置を取り消す(と市は思っていないらしいが)ために更に違法な要求を出した大田原市は、まさに恥の上に恥を塗りたくった。かつては(今もかな? だと怖い)原水禁運動に関わったという千保さん、大丈夫? 人ごとながら心配だ。
 その後、教育委員会へ。ここでも「聞くだけ」の職員が対応。
 大田原市教育委員会は、新入生になる男児(麻原さんの「二男」)と、小学5年生になる女児(同「四女」)の転入学について「車での送迎」「付添いの学校立ち入り拒否」等の「要望」を出した。また、任意団体「大田原市佐久山地区オウム対策協議会」は、「女児の就学を認めるかわりに転入届受理人数を5人に減らす」「退去後は大田原及び周辺市町村に居住しない」等を「要望」。当の佐久山小学校は「通学班とは別に通学すること」等、同校PTAは「学校周辺を歩かない」「他の児童とは別の教室で授業を受ける」等を、おなじく「要望」している。公然と差別される同級生と彼らを監視し続ける親たち、「一般」児童はその光景から何を学ぶのだろう。
 差別を助長する側にいる教育委員会に対して、「オウム信者の就学に関する要請」(別掲)を手渡した。

厚生省・文部省・自治省に申し入れ
3月16日(木)、東京・茨城・埼玉・栃木の「支援連」メンバー6人で省庁申し入れ。
まずは、国民健康保険の適用について厚生省保険局・国民健康保険課へ。対応に出た菊田さん、乱雑な机の前から動こうとせず、「ここで立ったままでいいでしょ」と彼の椅子の周辺の狭い空間を指示。部屋は広く、10人掛けのソファもあるのに、そこへ案内しようともしない。15人程の職員は、皆一様に暇そうに新聞を呼んだり、菓子を食べたり、談笑したりしている。これが「在留資格のない外国人へは国保を適用しない」という10年近く昔に出した通達を変更しようともしない部署の姿か、と思うとむらむらと怒りがこみ上げる。その通達のためにどれだけ多くの人が苦しんできたか、この職員らは知ろうともせず居眠りしてきたのだ。
 話のできる部屋を、と何度も頼むと、菊田さん、やっと腰を上げた。待たされたあげく招かれた別室に、企画法令係長・河野恭子さんが対応に来た。
 国保適用の要件は「住所を有する」(国民健康保険法第5条)だけだ。住所を有することを住民票によって確認はするが、住民票自体は要件ではない。三和町など、住民登録がないことを理由に保険証を渡さない市町村は、明らかな違法行為を行っているので、実態を調査するよう、申し入れた。河野さんは、各県を通じて調査することを約した。
 次は文部省。対応したのは、文部大臣官房総務課法令審議室文部事務官・児玉大輔さん。文部大臣はすでに、都幾川村での就学について「自治体の奮闘を求める」発言を行っている。しかしそれぞれの地元では、教育委員会が信者の子どもたちが就学することに条件をつけたり、学校がPTA総会を開いてその意見に左右されたり(あるいはされるふりをしたり)することが相次いでいる。これらの違法行為の実態を調査し、適切な人権啓発活動を行うことを要請した。
 最後に訪れた自治省では、行政局振興課課長補佐の山口英樹さん他2名が対応に出た。今回要請に行った三省の中では、最もエライ立場の人が登場し、慇懃さにおいても特大だったが、しかし、その内容は極めて厳しかった。「転入届不受理の違憲・違法は百も承知しているが、違法であるとは決して言わないぞ」という決意がはっきり見てとれた。断固としてゆるがない曖昧模糊、とでも言うべきか、「自治体も苦慮している」「私たちも苦慮している」を繰り返すのみの対応に終始し、結論も展望も見えずじまいだった。
 オウム信者に対する自治体の違法行為について初めての省庁交渉。省側も意外だったと思うが、無理やりにでも窓口を開き、今後のためにそれを確保することはお互いのためになるだろう。特に厚生省の今後の動きに期待、注目したい。

(呼びかけ人・深見史)





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